「低レベル」放射線 内部被ばくによる健康障害2

2011年8月28日 栃木県宇都宮市
低線量被ばくを考える講座「50年後の安全」

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ガンマー線は体を貫いて反対側にすぐ出てしまうんで、
遺伝子に、染色体に傷を付けるわけですが、それはまばらなんですね。
治りやすい。
わたしたちにはものを治す修復機能がありますので治りやすい。
それに比べてアルファ線はあちこちに傷がついて、治そうと思ってもまた次が来るという事で異常再結合がおこると。
これがいわゆる悪性腫瘍、癌とか白血病、あるいは先天性障害の原因。
あるいは免疫異常の原因になる。
あるいは様々な心臓欠陥障害の原因、同様の病理の原因にもなる。

細胞には放射線に強い細胞と弱い細胞がある。
代表的なのはこれは強いのが赤血球。
これは酸素の運び屋ですね。
こちらは免疫の担い手リンパ球。

この大きさが大体8ミクロンぐらい。
で、リンパ球は弱いんですね。

そして血液の中では細胞がこういうふうに社会を作っています。

隣り合わせで、情報のやり取りもあるし、物のやりとりもある。
真ん中に核があります。
ここに染色体遺伝子があるんですね。
ここに直接放射線が貫かなくても、このあたり(A)を貫いてもですね、
あるいは隣の細胞(B)を貫いても影響が出るという事が最近分かってきました。

これをバイスタンダー効果っていうんです。
「脇にある」というような意味だと思うんですけれどね、

これは最近の生物学的な研究で分かってきたことです。

たとえば、水の分子。
放射線っていのは分子を切断するんですけれども、
H2O。みなさんよく覚えていらっしゃると思うんですけれども、
水はH2O。酸素が1個に水素が2個と。
それが放射線によってイオン化されると、水素Hと水酸基OHに分かれる。
今度くっつく時に酸素が1個余分につく。H2O2過酸化水素。

これが厄介なんです。
細胞の中にこういうものが作られる。
これは大変強い毒性を持っています。
オキシフルとかオキシドール、消毒薬として使っていたものですね。
こういうものが放射線そのものと同時に細胞の中に形成されて、そして染色体に影響を与える。

その結果、こういうふうに目に見える形で

これはベラルーシ、チェルノブイリです。
こういう子どもが沢山生まれてくることになったと。
ウクライナでもそうですね。

で、必ずしも障害というのは見えやすいところばかりではない。
いいですか、ここでちょっとウランの話しをちょっとだけご紹介しておきますけれども、

天然のウラン鉱からウランを掘り出してきた。
その時のウラン235というのは、これは燃えるウラン。
原子炉で燃やしているのはこれなんですが、0.7%じゃ燃えない。
これの比率を上げてやらないと、3.8とか、今はそれをさらに上げて4.2とか4.3でやっているそうですけれども、
5%前後にこれを持ちあげている。
「核濃縮」と言います。
ウランを濃縮する。
その時に大量のこの238という、いらないウランがゴミとして出てくる訳ですね。
核廃棄物です。
これがアメリカにいっぱい溜まってきていたと、あるいは予想されていた。

核分裂です。
ウラン235の原子核に中性子が飛んでいくと、こういうふうにして分裂して、そしてヨウ素131とかセシウム137。
あるいはプルトニウムのようなものになるので、その時にまた中性子を出す、出す。
このプルトニウムを3個出すと、核分裂のときに。
それだけ強いんですね、プルトニウムは。

で、先程も言いましたように、広島原爆は僅かソフトボール1個位のカサにするとですね、堆積。
片手で800g持てますが、
いま、原発で燃やしているウランの量というのはこれぐらい。
それで使用済み核燃料がどんどん、どんどん増えてきているんですが、
六ヶ所村の再処理工場で1年に処理できるのはこれぐらいだといわれているんです。
まだ動いていないんですよね、事故続きで。
だからフランスに委託している訳です。イギリスに委託していた訳です。
こいつ(六ヶ所村)が非常に厄介なの。
どんどん、どんどん溜まってきている。
いまはもう、福島第一の1号機2号機3号機4号機、あるいはその他の原発みんなそうですけれども、
あと始末に困るもんですから、そこのところに使用済みの燃料棒を水に浸けて保存しているんです。
4号機、福島の4号機ではこれが事故の元になっているんですよね。
トイレのないマンション。
私どもは言いますけれども、これが一番の難問です。
どうしようもない。
どうしたらいいかわからない。

それからこれはですね、水と空気と土の間でも、放射性物質は絶えず循環をしていると。
今だから、福島の事故現場から海の水にかなり流されているし、
それから溶けたウランが2000度3000度でまだ反応しているんですね。
圧力容器を破って、さらに格納容器も壊して、地下水と接触しているって言われています。

だからこの周りに、鉄の板ですよね、矢板格子版を打ち込んで、地下水への拡散を防がないといけない。
京都大学の小出先生もそういう事を言っていますけど、
ここにまだやる気配がないんでね、海の方はちょっとやろうという話は出ていますけれども、
まだ止まってない訳です。
どんどん環境にも出ていっている、大気中にも出ていっている。

ウラン238、大量に出てきた核のゴミをですね、有効に使いたいというので、
それも早い時期にです。

43年。
原爆の開発のまさに真っ最中にウラン238を兵器にして使おうと、
ウランを粉末にしてばら撒けば無差別に人を殺すことができる。
強力な兵器になる。
このあたりに毒ガスの事が書いてあるんですが、ここにそういう事が書いてある(赤枠内)。
機密文書ですけれど。

初めて使ったのは91年。イラクです、南の方です。バスラあたり。

これはアメリカ兵です。
2月ぐらいに砂嵐がワーッと吹き荒れて、
非常に小さな埃の粒ですよね、それに混じってウランの
ウランの小さな小さな粒がここのところにいっぱいあるわけです。
なんのマスクもしていない。
全く無防備でこの人達がアメリカに帰ってから
生まれた子どもの中にあらゆる障害を持った子どもが生まれてきている訳ですね。

それからイラクの兵士もそうです。
線上で戦ったイラクの兵士。
それが91年。
これから先天性障害が、これはイラクのバスラですけれども

だんだん、だんだん増えてきていると。

これはその他重障害で特にひどい子どもですけれども、
ここのところ(青丸)をちょっとご注目いただきたいです

英語ですけど、
兵士、お父さんの仕事は兵士。

こういう見えやすいもの以外にですね、いろんな中枢神経系の障害も出てくる。
縦軸が脳の見方、横軸が神経数

妊娠の後半にですね、ものすごいスピードで脳は発達するんですね。
人間らしい働きを身につけていく、その土台ができるわけです。

ところがその妊娠の後半にいろんな障害があると、

左が3歳。その子の神経のネットワーク。
右側は頭蓋発達が小さかった小頭症の子ども、13歳ですけれどもネットワークが非常に乏しい。
いろんな、知的障害やらいろいろとあるわけですね。
これは程度は色々です。
程度が軽いとなかなか分かりにくいという事があります。

第5福竜丸に19歳の時に乗った大石又七さん。

死の灰を背負って 私の人生を変えた第五福竜丸 
大石又七/工藤敏樹 新潮社

彼は静岡の田舎の経済的に貧しい家に生まれたために
中学を中退して14歳の時にカツオ船に最初乗ったんですね。
そして、そうこうしていて第5福竜丸の乗組員になる。
船の中で誕生日を迎える。
3月1日に西の空から昇る太陽を見た。
そして死の灰を浴びるわけです。
急性障害。
皮膚にいろいろと水ぶくれができたりですね、髪の毛が抜けるという症状を抱えながら、
焼津に帰ってくる訳ですが、
そのあと、半年後に一番年かさだった久保山栄吉さんが亡くなる。
そして、次々にその乗組員が癌で亡くなっていくんですね。
平均すると50歳ちょっとぐらいで、肝臓癌が多いんですけれども、
彼もがんを背負うんですけれども、大石さん、幸い手術が成功して、命を取りとめるわけです。
いま79歳です。
彼の背負った苦労はそれだけじゃなくて、
実は僅かばかりの慰謝料をもらったものですから、焼津に住んでいられなくなって、
「あいつだけ金もらって」というのがあったそうですけれども、
東京に出て、迎えた奥さんと一緒にクリーニング屋を始めるわけですね。
そして、クリーニング屋をやりながら、自分の体験したことを小学生中学生に語りかける、
語り部になっていくんですけれども、
この当時、克明に自分の体験したことをメモにしていたんです。
そのまとめたのがこれなんですけれども、
91年新潮社から出た。
この人の背負ったもう一つの苦難は、・・・子どもです。
最初の子が死産になった。
それだけじゃなくて、お医者さんが「障害があります」と「見ますか?」って言ったそうです。産婦人科医が。
そして大石さんは「いや、結構です」
そして40年その事を奥さんにも言えずにきたということを、
私も何回かお会いもしているんですが、話もされるし、物にも書いたと
この本はNHKのディレクターが大石さんの話を聞いて、「それを本にしたら」っていって最初に本になった本です。
彼は中学中退ですけれども、このような立派な本を書く。
この後も2冊出します。
で、この本を読んで、ノーベル文学賞を取った大江健三郎が感銘を受けてですね、
「大石さんと対談がしたい」という事で、その対談が今年の3月に予定されていました。
第5福竜丸の展示館が東京の夢の島にありますけれども、
休みの日にそこでやろうと。
ところが事故が起こって延びたんです。
5月にやっと実現して、それはこの間、1時間半のドキュメンタリーとしてNHKから放映されました。
今この人はそういう点では、内部被ばくの語り部としては非常に貴重なお一人になると思います。

ところが第5福竜丸だけではなかったんだと、
1000隻、ここには856と書いてありますけど、1000隻もの船があの海域にいて、
そして2万人以上の漁師さん達が当時被ばくをしたんですね。
それは闇から闇に葬られてしまった。
それを何とか記録に残そうとしたのが、高知県の高校生たち。
指導したのは山下さんというんですが、本になって、

ビキニの海は忘れない 核実験被災船を追う高校生たち
幡多高校生ゼミナ-ル/高知県ビキニ水爆実験被災調査団 平和文化

これの改訂版がその後出ますけれども、
この歴史的な事実も、この人達もみんな内部被ばくの被害者なんですが、
多くの人にはなかなか知られないままになっているんですよね。

で、大石さんはこのロンゲラップ、マーシャルのそこに元住んでいた人達と交流を深めている。

隠されたヒバクシャ 検証=裁きなきビキニ水爆被災 前田哲男
グロ-バルヒバクシャ研究会/高橋博子 凱風社

第5福竜丸のこういう模型をプレゼントしたりしているんですね。
その様子をずーっと取材して前田哲男さんがまとめたのが
「隠されたヒバクシャ」というこの本です。
この方はその後日本がやった1938年から5年間にわたって、
中国の重慶、シゼンショウに空から攻撃をかけて、ま、とにかくリンチ、蒋介石のリンチストーブスでやった(?)
その重慶の無差別爆撃、戦略爆撃を取材するんですが、
その前にやられたのがこの仕事なんですね。
大石さんもその中で非常に重要な位置にあった。

さて少し話は変わりまして、
プルトニウムを吸いこませた場合と、外からX線をかけた場合と、
あとで出てくる影響がどう違うかという実験をやられた
放射線医学総合研究所、放医研。千葉の稲毛にありますけれども、

内部被ばく群の方に、プルトニウムを吸わせた方に、
11倍多い肺の腫瘍の発症があった。

これは別の基礎実験ですが、
これは長崎のプルトニウム爆弾で、割と早い時期に亡くなった7人の方の臓器を病理解剖した。

それはアメリカが全部、全てのデータをアメリカに報告に持っていったんですね。
それをのちに長崎大学と広島大学に返すわけですけれど、
その材料、この解剖の標本を使ってやられた研究。
これは肺です。これは腎臓。こいつは骨。
それぞれのところにプルトニウムの小さな粒が今もあってですね、標本の中にあるわけです。
そこからアルファ線が出ているという事を証明した研究なんですね。

で、このグループはもっと前にトリウムという、これもアルファ線を出す放射性核種ですけれども、
これは、さかんに肝臓の血管の検査に造影剤として使ったんですね。
ヨウドよりも副作用が少ないと、これはいいというので使ったんですが、
後になって肝臓の癌が次々に出てくる。
そのデータベースが今東北大学にありますけれども、
そこの病理組織標本を使って、これも長崎の病理の人達がまとめた

同じようにこのアルファ線が肝臓のところから出てくることが証明されているんです。

癌で亡くなったイラクの人達、子どもたち。

何回も言いますけれども91年に初めて劣化ウラン兵器が使われて、
すぐからやっぱり、こういうふうに増えてくるんですね。

これは一例です。

目の神経から出てきた癌です。
ここ(黄色丸)を見ていただくと、お父さんの仕事は兵士。
この子自身ももちろん吸い込んだかもしれないんですけれど、
お父さんの生殖器官を通してこの子に障害が言ったという考え方も成り立つものですね。

甲状腺がんです。
これはベラルーシですけれども、

86年の2年位あとからもう出てくるんです。
予想ではこんなもんだろうと言っていたんですけれども(点線)
実際調べてみるとこんなに。

これは乳がんです。
ゴメリと書いてありますけれどベラルーシの一番汚染された地域。

86年ですから、10年位のタイムラグがあります。
乳がんは遅く出てくる。
こんなふうに増えてくる。10年。

これは、日本の秋田の気象庁の観測で捕まえられたセシウム137

大気圏実験が盛んにやられた50年代60年代にもいくつかこう、ピークがありますけれども、
アメリカ、イギリス、ロシア、フランス。
70年代に中国が参加してくる。
で、86年チェルノブイリ。

で、乳がんがだんだん、だんだん、
乳がんで亡くなってきている人が増えている訳で、

どこで調べたか?というと、
青森、岩手、秋田・・これは厚生労働省が調べたんです。
そして、86年ですよね。
これはやはり、10年ぐらい遅れて乳がん死亡のピークがきている。

で、「人間長生きするようになったから癌がこんなに増えてきているんだ」という人もいるんですが、

年齢別にこれはずっと、
一番下が50歳代から60歳代前半後半と見ていくとですね、
各年齢階層でやっぱり癌は増えているんですね。
これは肺がんです。
男の場合と女の場合。
女性の方が少しカーブがゆるいですけれども、これは煙草が効いているかもしれません。
他にも性差原因になることもあるかと思うんですが、
こういうデータもやっぱり、しっかりと残っている訳ですね。

続き⇒「低レベル」放射線 内部被ばくによる健康障害3