福島原発事故から12年

■はじめに

  前例のない未曾有の原発災害をもたらした東京電力福島第一原子力発電所爆発事故から13年目を迎えました。福島被災現地では、ハードな復旧・復興事業のほとんどが完成していますが、人や地域の絆は依然として取り戻せていません。いまだ数万人余の人たちが、生まれ育ち生活していた土地に戻れず、避難生活を余儀なくされています。

 にもかかわらず、岸田政権は、昨年末に示した「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針案」において、まるで原発事故など起きなかったかのように、気候危機対策に便乗した原発再稼働、40年寿命を大幅に超える60年超稼働、さらには新規原子炉の建設などに大きく舵を切りつつあります。

 この方針の中にある再稼働の対象として、茨城県にある「東海第二原発」が具体的な再稼働の対象として指名されました。このような政府の原発方針を忖度するように、東京電力の旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴された裁判で、東京高等裁判所は「巨大津波の襲来を予測することはできず、事故を回避するために原発の運転を停止するほどの義務があったとはいえない」として、1審に続いて3人全員に無罪を言い渡しました。また、政府は今年8月24日、漁業者からの合意がないまま汚染水の海中放流を強行しました。

 しかし、2011年3月11日に発令された「原子力緊急事態宣言」はいまだに解除されていません。事故を起こした原子炉サイトからは依然として高レベルの放射性物質が大気や海洋に流出し続けており、事故収束作業も廃炉工程も大幅な見直しが避けられない状況です。

 また、この数年、日本各地でマグニチュード4以上の地震が多発しており、高い確率で南海地震・東南海地震の発生や、富士山をはじめとする活火山の噴火予測がされています。もし、東日本大震災クラスの大地震が発生すれば、原発だけでなく、核燃料貯蔵施設や、使用済み核燃料再処理施設等への破滅的な影響が避けられません。

■放射能による小児甲状腺がん、健康被害が多発

 そして、原発の爆発事故によって放出された放射能による汚染の影響で、事故後の10数年間で子どもたちの甲状腺(小児甲状腺がん)がんが300人を超えて発生し、さらに増え続けています。小児甲状腺がんを患った7人の若者たちが提訴した損害賠償請求訴訟は1年を過ぎました。

甲状腺がんは338人(2022年12月現在)にものぼります。この事実に対して、福島県の「県民健康調査」検討委員会は一貫して「スクリーニング効果」や「過剰診断論」を理由として、「放射線による影響はない」と否定し続けています。

 小児甲状腺がんの多発以外にも、東北関東地域では放射線障害が原因と思われる様々な健康被害の発生がみられます。小児甲状腺がんに罹患して提訴に及んだ7人の原告をはじめとする多くの放射能汚染被害者の救済と、やむなく故郷を後にして避難せざるを得なかった多くの被害者に対する賠償は、当たり前のこととして認められなければなりません。

 政府は汚染水の海洋放出の外に、福島県で発生した放射能汚染土を全国の公共事業で再生利用する道を開くため、環境省の関連施設がある埼玉県所沢市、東京都新宿区、そして茨城県つくば市で「実証事業」と称し、汚染土の埋立事業を行おうとしています。放射性廃棄物処分の目処がまったく立っていないうえに、世界でも類のない地震大国の日本で、原発の再稼働や新増設を行なうなど、無謀以外の何ものでもありません。あらためて言うまでもなく、核と人類は共存できません。

 私たちは、12年前に起きた原発事故由来の放射能汚染によって、小児甲状腺がん等による健康被害だけでなく、福島をはじめ東北関東地域の広範囲で様々な種類のがんや心臓疾患など、多くの健康被害が生じているという現実を明らかにし、 二度と原発事故を起こすことのない、「安心・安全」な社会を構築する必要があります。
放射能汚染公害被害の原因と責任の明確化