甲状腺がん潜伏期間はテルルの影響で異なる?

甲状腺がん潜伏期間はテルルの影響で異なる?
 桐生 広人(フォトジャーナリスト)

 1970年代半ばから原水爆(核)実験などで生じた放射線に被ばくし健康被害を被ったと主張する内外の被ばく者にその体験をインタビューしてきた。当然、福島原発事故により多くの人々が放射線被ばくから健康被害を被ったに違いないと考えその体験を聞いて2020年に出版した(注1)。

 インタビューを始めたのは2019年からだが、原発事故からすでに9年が経過していた。奇しくも、アメリカのビキニ水爆実験で被ばくしたロンゲラップ島の子供たちに甲状腺腫瘍の多発が診断されたのが被ばくから9年後のことだったが、福島では小児甲状腺がんがすでに多発していた。福島での多発は県民健康調査1巡目の事故から2年以内に明らかになっていた。ロンゲラップの子供の甲状腺がん多発は放射性降下物のヨウ素131が甲状腺に蓄積されて被ばくしたことが原因、とするアメリカ当局の報告はすでにある。アメリカ保健福祉省のがん研究所は調査の結果、小児甲状腺がんの95%は放射線被ばくが原因と断定した。エネルギー省は不十分ながらも患者らに賠償を行なった。一方福島では県民健康調査の甲状腺がん調査は現在も続けられ、すでに300人近くの子供たちが癌の疑いを診断され手術を受けている。が、放射線被曝の影響は否定されている。

 ロンゲラップの子供たちは高濃度の放射性降下物にさらされたが全員が58時間以内に避難し除染を受けた。その後汚染の残る島に戻ったという経緯はあるが甲状腺の異常が出現した潜伏期間は8から9年である。それに比べると福島での小児甲状腺がんの出現はあまりにも早い。報告されている甲状腺への被ばく線量は福島よりもロンゲラップ島の方が圧倒的に大きいとされるが、福島での調査数は少なく確かなことは不明だ。放射性ヨウ素131が被ばくの主な原因とされるがこの潜伏期間の差異はなんであろうか。

 このたびの公害等調整委員会への申し立てでは、福島原発事故後の健康被害は「テルル化学毒と放射能毒の複合汚染による被ばく汚染」によるものだと呼びかけ人である山田國廣さんが指摘している。放射性降下物に含まれたテルルの同位体は発がん性と様々な強い毒性を持ち甲状腺に蓄積してがんを引き起こすことを解明した。放射線の影響だけでなくこれまで不明だった毒性物質の影響が明かされることで潜伏期間の差異などの原因がわかるかもしれない。そして健康被害の原因と責任を明らかにし被害を受けた方々の救済につながることを期待したい。

(注1) 「被ばく体験者に聞く」kindle版・ペーパーバック 

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