Q1:今回は裁判所への提訴ではないのはなぜですか?どんな意義や利点があるのでしょうか?
A1:公害等調整委員会への申立制度ができたのは、従前の裁判では判決が出るまでに相当の時間を要したため、司法的解決ではなく行政上の手続きで迅速な解決がされることを目的として出来た制度であることです。
そして何よりも、裁判では因果関係の立証を訴える側の原告が調査等の費用負担をして立証しなければなりませんが、公害等調整委員会への申立てでは、国の機関である公害等調整委員会が国の費用(税金)で必要な調査を実施してくれることです。
また、裁判では、弁護人以外の申立人の自由な意見陳述や情報の公開がなされない傾向がありますが、証人申請の採用も裁判と比べて採用の可能性が高いことです。また、相手側(被申請人)が必要な情報を出さない場合には、公害紛争処理法の規定により、情報の開示命令を出すことも可能性としてあることです。
そして何よりも、過去の例えば、『杉並病事件』の場合には、健康を害した物質の特定が困難な場合(杉並病の場合には、1000種類以上の化学物質の発生が公害等調整委員会の調査により判明しました)、どの化学物質がどの被害との因果関係を立証することは不可能なので、その原因施設が操業を開始する前と後での健康被害の発生を立証することで、因果関係が認められたことです。おそらく裁判では認められなかったのではないかと思われます。
以上のような理由から、今回は公害等調整委員会への原因裁定の申立てを行うことを考えています。
【関係サイト】
総務省公害等調整委員会’よくあるご質問’
Q2:すでに3.11子ども甲状腺がん訴訟が行われていますが、その裁判との関係はどうなるのでしょうか?
A2:「子ども甲状腺がん訴訟」は司法的な解決を求めたの裁判ですが、「原因裁定を求める会」の行う原因裁定は、1970年に制定された「公害紛争処理法」に基づく行政的な解決を求める手続きであることの相違点があります。両者とも原発事故によって放出された放射能汚染による健康被害を立証するための取組では共通した闘いですので、今後は車の両輪の闘いとして、十分なコミュニケーションと情報交換を行っていくことが肝要であると考えています。
Q3:私も原因裁定の申立てに加わりたいのですが、どのような手続きになるのでしょうか?福島県民でなければ参加はできませんか?費用負担や毎回開かれる調停期日に参加しなければならないのでしょうか?
A3:2011年3月の福島原発事故によって放出された放射性物質によって被曝して健康被害を発症された方であれば、福島県内での被曝に限らず、東北関東等の地域で被曝された方であれば、どなたでも申請人になることができます。
手続き的には、弁護団への委任状の提出と調停申請を行うのに必要な手数料(公害等調整委員会に支払う申請手数料として3,300円の負担)の納付をしていただければ、それ以上の費用負担等はありませんので、ご安心下さい。なお、毎回開催される調停期日に必ず参加しなければならないとの義務づけはありませんので、ご安心下さい。できましたら、周囲の方々にお知らせをしていただければ助かりますので、よろしくお願いします。
Q4:福島原発の爆発事故で放出された放射性物質にはセシウムやヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、キセノンなど多種類の核種の存在が知られていますが、その中でテルルが主犯であるという根拠はあるのでしょうか?
A4:確かに福島原発の爆発事故によって、炉内に蓄積していた放射性核種には、表に掲げるように多種類の放射性物質が存在しています。この中にはプルトニウムに代表されるように、放射能毒とともに化学毒性が強い物質が存在しており、実はテルルという金属も放射能毒とともに化学毒を有することが判明しています。
もちろん、テルルが唯一単独で甲状腺がん等の代表的な放射線障害をもたらしているという訳ではなく、これからの放射性核種による複合的な影響があるとともに、テルル単独による放射能毒と化学毒の両方の毒性による複合的な影響が発現しているのではないかという意味で、ある種の初期の急性原爆症に類似した初期被曝症状と、その後の臓器等への蓄積性のテルルによる慢性的な放射能毒と化学毒の複合的な慢性原爆症に類似した健康被害が発症している可能性を否定できないと考えています。
テルルの毒性の具体的な影響については、①テルル化合物は遺伝子障害を起こし細胞をがん化させる可能性を有していること、②テルルは甲状腺に蓄積し安定ヨウ素を減少させてヨウ素欠乏症を起こし、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺がん、産褥障害、新生児先天奇形を発症させるなど、2つの経路から甲状腺がんを起こす毒性を有しています。ここにテルルの放射能毒と化学毒による複合的な影響を重要視する根拠としています。