申立人からの訴え3

健康被害を認め原因と責任を明らかに!  
      安齋徹さん(飯舘村小宮)

 原発事故から13年経つがいまだに体調は回復せず不安で、東京電力や国に対する不満はいっぱいある。

3月11日に起きた地震の大きさから福島第一原発が事故を起こすのは間違いないと確信し、すぐに小宮(飯舘村)の自宅にこもって様子を見た。14日の3号機の爆発音を2回聞き15日の2号機の爆発の後、谷間にあった自宅の周りに事故原発から放射性プルームが飛来し霧状のそれは何日も漂った。赤錆がかった霧からは金属臭がし、肌がピリピリ傷み長く続いた。何日もその中で暮らし下痢に見舞われ避難したのは6月も末のことだった。こうした異常は今思えば放射能汚染による初期症状っだのだが、病院も国も放射能汚染の影響だとは認めなかった。

 今回、健康被害原因裁定の調停申立人になったのは、呼びかけ人の山田國廣さんが私が体験した健康被害は放射能汚染とそれに含まれたテルルなどの毒物に被ばくした複合汚染であることを突き止めてくれたからだ。

 国は被ばくした放射線量は低いというが、テルルという同位体は猛毒で原発から大量に発生しプルームに乗って広がった。それに晒されたり摂取したために起きた健康被害だという。

 しかし、こうした初期症状の後、頭髪が抜け落ち脳や心臓の血管にも異常をきたすようになった。心筋梗塞と診断された時は血管を膨らませる薬の投与を受けた。その時、医師は血管が狭くなるのはセシウムの影響もあるといった。セシウムもプルームとなって飛来した放射性毒物でまさにこれらからの複合汚染によって起きた健康被害だ。

 昨年末には腰痛になり今年初めにはお尻や足の筋肉にかけて電気が走るような痛みが始まった。これもセシウムなどの放射能の摂取の影響かもしれない。

 こうした健康被害の原因と責任を明らかにすることを求めて公害等調整委員会に調停を申し立てることにした。(以上)

更なる思い

渡辺瑞也(福島小高赤坂病院 医師)
2023年9月12日 )

 このたび山田國廣先生は、「これまで唱えられてきた放射能による健康影響学において無視されてきた『テルルの化学的放射能的毒性』こそが実は重要な要因であり、場合によっては主因となり得るほどのウエイトを有するものである」という研究結果を発表された。更に、東京電力福島第一原発過酷事故においてはこのテルル化合物を含むプルームが継時的に計9本ものルートを辿って東日本に拡散したことを示された。

 これまで私達福島原発事故被ばく者は、IAEAやICRP等の国際機関や日本政府、福島県が主張する「福島原発事故放射線に起因する健康被害は生じない」という無害論に対して様々な角度から批判してきた。それは、被ばく量の見積もりや内部被ばくの評定をめぐっての言わば「セシウムを中心とした放射能毒による健康被害」という土俵上での論争であった。

 しかし、山田國廣先生の主張はこれとは全く次元の異なる新たなパラダイムへのシフトである。

 事故後の比較的早期に問題となった鼻出血の問題は先生の主張を完全に裏付けるものであり、鼻出血の存在そのものを否定しなければ説明できなかった放射線医学専門家達の過ちをものの見事にあぶりだしている。

 山田國廣先生が提起した「テルル化合物による化学的放射能的毒性に因る健康被害」という新たな領域は、今後大きな科学論争を惹起することと思われるが、現に様々な健康障害に見舞われている私達福島原発事故被ばく被害者にとってはこの上ない極めて大きな学問的バックボーンを与えて頂いたものと思う。

 即ち、原発事故後直ちに起きた健康異変から事故後12年余の今日までの間に生じたあまたの健康異変が、テルル毒によるものである可能性が大きい、という山田國廣先生の研究は,私達の訴えを支持する確かな学問的基盤になるものであると思う。

以下は、私が公表してきたいくつかの著作物を挙げたものです。ご参照願えれば幸いです。
①著書:核惨事(批評社、2017

既発表論述文
(ⅰ)放射線被曝症候群という概念の提案、 
(被曝・診療 月報第42号、ふくしま共同診療所医師連絡会 2020年12月)          (ⅱ)福島原発事故由来の放射性物質による健康被害-その存在を否定する ことはできない、(被曝・診療 月報第55号、ふくしま共同診療所 医師連絡会 2023年4月)
(ⅲ)放射線被曝問題をめぐるバイアス
   (福島県医師会報第83巻8号、2021年8月)

テルル化学毒と放射能毒の複合汚染による被曝汚染

福島原発事故放射能汚染公害被害原因裁定を求める会
京都精華大学名誉教授、山田國廣

◎公害調整委員会への申し立てにご支援を!!

1.クラウドファンディングへの支援をお願いします

  広島原爆投下から今年8月で78年がたちました。核分裂毒物テルルの悲劇は①広島原爆投下からはじまり②長崎原爆投下③ビキニ核実験④セミパラチンスク核実験⑤スリーマイル島原発事故⑥チェルノブイリ原発事故⑦福島第一原発事故と悲劇は繰り返されてきました。

 広島原爆事件以後の原爆・原発推進権威筋は「核分裂事件による健康被害原因はすべて放射能単独犯であり、健康被害は主要には外部被ばく指標のmSvにより評価できる」と説明してきました。

しかし、「核分裂事件による健康被害を起こした主要原因は、毒物テルルによる内部被ばくが主犯であり放射性物質との複合影響でした」。原爆・原発推進権威筋は意図的に、被害を起こした主犯物質がテルルであることを隠してきたのです。それこそが“核分裂悲劇が繰り返されてきた”根本原因でした。

 原因裁定の目的は「福島第一原発事故後に多発した急性原爆症状、甲状腺がん(結節の増大を含む)や白血病などがん、新生児の先天異常など多くの疾病の主要原因物質が、核分裂により生成され事故により放出された毒物テルルである」ことを明らかにすることであり、重要な社会的意義を有しています。

 原因裁定に関しては4年ほど前から準備を進めています。第一次申請人としては福島第一原発事故当時の居住地が福島県南相馬市小高区の渡辺瑞也さん、飯舘村小宮の安齋徹さん、福島市庄野の大越良二さん、郡山市菜根の松本徳子さんの4名が決まっています。弁護団も釜井英法さんを主任弁護士とする5名により編成され、原因裁定申請手続きに向けて何度も検討会議を重ねてきました。近々には公害調停制度に基づく原因裁定の申請がスタートします。

 「福島第一原発事故後の健康被害多発原因物質の真相究明」について関心がある皆様に、お願いがあります。原因裁定申請に関して様々な経費が必要となります。この経費調達のためクラウドファンディングを行うことになりました。今回の原因裁定の社会的意義をご理解いただき、ぜひご協力(具体的方法について別掲欄1を御参照ください)をお願いします。

2.テルルの急性毒は5感(視覚、温覚、味覚、臭覚、痛覚)+心で感知できる特徴を有していた

核分裂により生成される毒物テルルの化学毒により、特に急性原爆症は「五感+心で感知する健康被害症状」を有していました。原爆・原発推進権威筋は「放射能は眼に見えないし、匂いも、味もないので、わかりにくい」と説明してきました。しかし、核分裂事件後の急性原爆症には、青い光、温かい空気、金属臭、ニンニク臭、皮膚刺激という五感に感じる自覚症状があり、放射能毒だけでは説明がつきませんでした。

「テルル(Te)は空気中で青緑色(視覚)の炎を上げて燃え(温覚)、二酸化テルル(TeO2)を生じる(日本第百科全書、“テルルの意味・解説より)」。

「テルルのエアロゾルは眼、気道を刺激(粘膜刺激)し、肝臓、中枢神経に影響を与えることがある。吸入すると嗜眠、口内乾燥(皮膚感覚)、金属味(味覚)、頭痛(痛覚)、ニンニク臭(臭覚、吐き気を生じる、目に入ると赤発、痛み(痛覚)を生じる。そして腹痛(痛覚)、便秘、嘔吐、悪心(心)、倦怠感(心)、チアノーゼ、口腔粘膜の異変、脱毛、鼻血などが起こります(国立環境研究所、テルル及びその化合物より)」

テルルには、神経毒性、免疫毒性、生殖毒性、遺伝毒性などもあります。詳しくはテルルとは別資料1「山田國廣著:テルルの毒性―福島第一原発事故で放出されたにもかかわらず隠されてきた毒物の正体」を参照してください。

3.福島第一原発の1号機、2号機、3号機から放出された9本のプルームには、「テルル(Te)が燃えて二酸化テルル(TeO2)なり青緑色または藍色に発光する」映像で確認できます

 2011年3月11日14時46分に東北太平洋地震(M9)が発生し、津波が起こり、核燃料冷却機能損傷が起こり、1号機、3号機、2号機の順番にメルトダウンが起こり、3月12日から21日までに9本のプルーム別資料2参照が放出されます。

福島第一原発において最初に核分裂物質大量放出事件を起こしたのは1号機でした。1号機は3月12日の早朝から冷却機能損傷し「ベント放出をしないと格納容器が爆発する恐れがある」という理由で、12日の14時ころにベントが実施されました。東京電力の事故報告書に12日15時の「1,2号機排気塔から山側に蒸気のようなものが見える」という写真映像別資料3参照が出てきます。このプルーム映像をよく見ると、プルーム出発点の排気口の出口周辺では白い蒸気が見えるのですが、少し離れ場所から藍色(二酸化テルルの化学発光色)が見えています。1号機ベントプルームはP1を形成し、北北東方向へ移流して浪江町、南相馬市を経由し海上へ出ていきます。

 3月12日15時26分に1号機建屋水素爆発が起こります。鶴田俊著「福島第一原子力発電所原子炉建屋の爆発現象の画像解析による検討(日本燃焼学会誌54巻167号)」には、1号機建屋水素爆発時の炎とプルームの広がりの時間変化写真(別資料4参照)が出てきます。オレンジ色(CsO2の色)の炎が広がって行く様子と、水蒸気の白い部分と二酸化テルルの青い部分がまだら模様状になったプルームが150m/秒という高速で北北西方向に移流していく様子が確認できます。1号機ベント放出プルームと建屋水素爆発プルームは、P1を形成して北北西方向へ移流し、浪江町、南相馬市を経て13日昼過ぎには女川沖100㎞に到達していたトモダチ作戦活動中の空母ロナルド・レーガン乗組員を被ばくすることになります。

 3月14日11時、3号機の建屋水素爆発が起こります。このときの爆発時炎とプルームが東方へ273m/秒という高速で海上方向へ移流していく超解像写真(別資料5参照)が前述の鶴田氏論文に出てきます。この超解像写真によると立てやすい爆発直後から炎が噴き出し大きくなっていく様子がよくわります。炎の中心部はオレンジ色(二酸化セシウムの化学発光色)が炎周辺部には藍色に近い発光色が見えます。鳥の羽形状をしたプルーム映像は白く見える水蒸気部分と青色の二酸化テルル部分が層状に混在していることが確認できます。 3号機の建屋水素爆発時の炎については、2021年1月27日に日本テレビがnews everyにおいて「福島第一原発の事故から10年。原子力規制委員会は日本テレビが最新の技術で解析した映像などをもとに新たな技術報告を行った」と解説しています(youtube

 原子力規制員会が提出した事故分析報告書に超解像映像(別資料6参照)が出てきます。この映像では、炎中心部のオレンジ色部分と周辺部の藍色がよく確認できます。

 3号機のプルームは海上方向へ移流していったので、陸域の被ばくはまぬがれたのですが、双葉町、浪江町、南相馬市の海岸部ではプルーム範囲が及んでいました。

 2号機は3月14日から冷却水機能が損傷して燃料を冷やせなくなっていきます。14日の夜には、核燃料がメルトダウンを起こすのですが、1号機、3号機の場合と異なり、メルトした核燃料の大部分が圧力容器に中に残り、一部が圧力容器の底を破り抜けて格納容器に落下します。このため2号機でメルトした核燃料は圧力容器に中に宙吊り状態になり、冷却水で冠水させることができなくなりました。2号機の建屋南側にブローアウトパネルがありましたが、1号機建屋水素爆発時に脱落して大きな口を開けていました。このため、2号機のプルームは圧力容器から抜け出し建屋南側のブローアウトパネルから放出を続けることになりました。3月15日10時の2号機建屋放出映像別資料7参照は、ブローアウトパネルから大量に放出されているプルームの様子ですが、遠景写真であるために色の判明はできません。2号機は14日夜に、首都圏を含む関東一円を被ばくさせたプルーム(P2)を放出し、15日の午前中から浪江町、飯舘村、福島県中通りを経由して関東圏に達する福島原発事故最大のプルーム(P3)を出します。

 3月16日時点では、2号機ブローアウトパネルからと3号機爆発建屋からのプルーム放出映像(別資料8参照)があります。2号機、3号機ともプルームには薄い藍色が混入していることが確認できます。この2号機、3号機プルームはプルーム(P4)を形成することになります。

 3月20日9時30分時点、航空自衛隊撮影の2号機ブローアウト放出プルームと3号機爆発建屋放出プルームの映像(別資料9参照)が原子力規制委員会報告書に出てきます。この時の2号機、3号機のプルームは前述の16日時点のプルーム映像のプルーム継続放出版になっています。映像をよく見ると、2号機、3号機ともにプルーム先端部に薄い藍色が混入していることが微妙ですが確認できます。3月20日にはプルーム(P3)と同じ軌跡で福島中通りを被ばくさせたプルーム(P8)が放出され、そして21日には15日に関東一円を被ばくさせたP2と同じ軌跡をたどるプルーム(P9)が放出されました。これ以後も2号機からはプルームが出しつけられ建屋周辺に「怪しい霧(別資料10参照)」を出し続けました。

別資料2~10織り込み本節別資料参照に飛ばずにここまでの本節文が読めます。

 「世界の核実験、原発事故現場のキノコ雲やプルームに青い光映像集(別資料11)」には、広島、長崎原爆においても確認できます。ビキニ核実験ではキノコ雲の上部が二酸化テルルの青い光、下部には二酸化セシムのオレンジの光が重なっているキノコ雲映像があります。チェルノブイリ原発事故では事故後の原発建屋から放出されている青い光が見えます。

4. 福島第一原発事故後にテルル毒影響と特徴である「五感で感知する健康被害症状」が起こっていた被ばく住民証言

 「テルル毒による五感で感知できる健康被害症」がよくわかる3人の被ばく証言を紹介します。この3人と同様の健康被害症状が広島原爆、長崎原爆、ビキニ核実験、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、そして福島第一原発事故後の東日本において起こっていました。その証言記録は「山田國廣著:核分裂・毒物テルルの発見―原爆/核実験/原発事故被害者たちの証言から(藤原書店)2023年2月発刊」において多数の証言録を掲載していますので、ぜひ熟読していただきたいのです。

私が「原発事故後の健康症状の主犯は毒物テルルではないのか」と発見したのは「トモダチ作戦に参加してきた空母ロナルド・レーガンおよび随行艦船の乗組員がアメリカで起こした健康被害賠償請求裁判原告団長リンゼイ・クーパーさん証言記録」でした。空母ロナルド・レーガンは3月13日の12時過ぎに女川沖100㎞の海域に到達していて1号機放出のプルーム1に被ばくします。

(1)2011年3月13日、トモダチ作成に参加した空母ロナルド・レーガンの甲板要員だったリンゼイ・クーパーさん(原告団長)は「雪が降り寒かった」と語っています。「私たち四名は、甲板に上がって30分から一時間ほどで、突然皮膚が焼けるように熱くなってヒリヒリし、続いて頭痛に襲われました。その時甲板上では航空機は一機も動いておらず、熱い突風が吹き抜けることはないはずでした。口の中に血のような味がしました。アルミホイルをなめたような感じと言っていいでしょう」。雪を降らせたのは、まぎれもなくフクシマから流れて来た放射能雲プルームです。ヒロシマ・ナガサキで原爆のススが入り「黒い雨」として降ってきた、あれと同じ現象です。雨が雪になる寒い日なのに熱い風を感じ、裸の腕が火傷のような症状を呈しました。舌は金属味を感じました。3月13日から19日の間にクーパーさんの毛髪は薄くなり、ポニーテールにしようと手を当てるとバラバラ抜けました。「腕まくりして外気にさらされていた両腕の、肘から下を触ると焼けるようで、まるで何かが皮膚の下で匍っている感じです。それがずっと続いています。腹痛、尿洩れ、肛門出血が起こりました。船から降りた後、体重が激増し、頭痛や記憶障害に見舞われ、歯は欠け、筋肉に問題を抱えるようになり、全身がゆっくりと悪くなって行くようです。(田井中雅人、エイ・ツジモト著、漂流するともだち アメリカ被ばく裁判:朝日新聞出版より)

(2)飯舘村小宮・安齋徹さん(公害調停申し立て人)の話は、2011年月15日朝の2号機から飯舘村にプルームが到達した時の証言です。「雨が雪になり、黒いものが混じって降ってきました。金属の焼けるような臭いがして、周りの空気が赤錆色に見え,肌がピリピリ痛みはじめたので、家に閉じこもっていました。スーパーにいき戻って風呂に入ると皮膚の表面にヒリヒリ感があり、風呂から出るとヒリヒリからビリビリになりました。その間も金属臭が続きました・・・(桐生広人著福島第一原発事故・健康リスク:被ばく体験者に聞く、Amazon Kindle版)。後日に安齋さんは、脱毛が凝り、脳梗塞、心筋梗塞に見舞われました。

(3)ノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシェービッチさんの「チェルノブイリの祈り(岩波書店)」にも、プリピャチ市(原発から3.5㎞はなれた都市)に住んでいた女性カーチャさんの避難するときの証言が出てきます「バスに乗っていくとき、空はまっ青でした。・・少しめまいがし、喉が伊賀らぽい感じでした。・・私が覚えているのは、町を離れるとき、空がまっ青だったこと」。チェルノブイリの祈りには、このような「青い光を見たという証言」が多く出てきます。 

5.原爆・原発を推進してきた権威筋は「放射能単独犯説」と「健康被害は外部被ばく指標のmSvで評価できる」という被ばく住民を騙す言説をふりまいてきた

 広島と長崎原爆投下後に、米軍主導の原爆障害委員会(ABCC)は、「外部被ばくのみが急性原爆症の原因である」「放射能は爆心地から3㎞以遠には降下しなかった」という,被ばく住民騙しの言説を振りまきました。ABCCを引きついだ放射能影響研究所は、重み付け結腸線量という外部被ばく線量評価指標で、長期寿命調査(LSS)を開始して、住民騙し手法をより巧妙にしました。福島第一原発津事故後、元長崎大学教授の山下俊一は100mSvまでは健康被害が起こらない」という、究極の騙し言説を各地で振りまきました。

 「放射能単独犯説」は原爆・原発推進権威筋の疑似科学トリックなのですが、このトリックが権力とお金を駆使してばらまかれてきたため放射能専門家、科学者、マスコミ、そして被ばく住民の方々にも”すり込まれてしまった“のです。

 広島原爆投下後78年が経過した現在においても、広島原爆では黒い雨訴訟が継続しています。ビキニ核実験でも被ばく漁民の訴訟が継続しています。そして、福島第一原発事故では多くの訴訟がありますが、放射能単独犯説では健康被害の因果関係が説明できないのです。それは「被ばく後の健康被害を越した主犯(主要原因物質)が毒物テルルの化学毒にあることが隠されてきた」からです。

公害調停・原因裁定の目的は、「この隠されてきた真実を明らかにする」ことにあります。そのためのクラウドファンディへのご協力を切にお願い致します。

              2023年9月11日 京都市自宅書斎にて 山田國廣

   

申立人からの訴え2

公害裁定を申請した私の思い 

 渡辺瑞也(2023年7月)



私は、福島第一原発の炉心溶融が始まった2011年3月11日から3日間、原発から北北西18kmの職場に留まって被ばくしました。その後、いわき市を経て南会津に避難し、3月18日から23日まで東京~川崎に避難しました。その後何度か職場建屋に出入りしていましたので一定量の追加被ばくをしました。

 事故後、翌2012年頃から順次歯の痛みとグラつきが出て計5本の抜歯を余儀なくされたり、2014年には不整脈が出没、2015年3月には転倒して腰椎圧迫骨折、そして2015年12月にはデノボ型結腸癌が判明して手術+抗がん剤投与による治療を受ける、というように相次ぐ健康異変に襲われました。

 また、私の伴侶は2016年から高度不整脈が現れて心臓ペースメーカーを植え込み、以来徐々に心臓病が悪化して現在は心不全状態になってしまいました。

 二人とも、3.11以前は著患なく健康な日々を送っていました。

 この他、私の職場の同僚やそのご家族の中には肺がん、乳癌、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、などを発症した方々がおられます。

 原発の近くや高度汚染地域に住んでいた住民には、原発事故放射線が原因としか考えられないような様々な健康異変が徐々に、しかも確実に顕在化・増加してきています。 

 以上のような現実を身をもって体験してきた原発事故被ばく者である私にとって、INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)で最重度のレベル7と判定された福島原発事故で放出されたテルル等の化学物質や多くの放射性物質による内部・外部被ばくによって様々な健康障害が引き起こされたことは疑う余地はなく、これを一切認めない国の姿勢に納得することは到底出来ません。

 私は、こうした実態を無視する国の政策を改めさせるべく藤原寿和氏や山田國廣氏らのご支援を頂きながら、原発事故放射線障害を重大な公害と捉え直してその実態と因果関係を明らかにして行く道を切り拓いて行かなければならないという決意を固め、この度、原因裁定申請申立人となりました。

 公害等調整委員会におかれては、私の申請に対しまして純粋に科学的な立場に立って真実に基づいた裁定を下して頂けることを期待しております。

 そして、同じ苦悩を抱えておられる被害者の方々をはじめ、志を同じくする多くの方々のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い致します。 
                        

福島原発事故から12年

藤原 寿和(千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会事務局長)

■はじめに

東京電力福島第一原発事故で発生した放射能汚染被ばくによる公害被害)

  前例のない未曾有の原発災害をもたらした東京電力福島第一原子力発電所爆発事故から12年目を迎えました。福島被災現地では、ハードな復旧・復興事業のほとんどが完成していますが、人や地域の絆は依然として取り戻せていません。いまだ数万人余の人たちが、生まれ育ち生活していた土地に戻れず、避難生活を余儀なくされています。

 にもかかわらず、岸田政権は、昨年末に示した「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針案」において、まるで原発事故など起きなかったかのように、気候危機対策に便乗した原発再稼働、40年寿命を大幅に超える60年稼働、さらには新規原子炉の建設などに大きく舵を切りつつあります。
 この方針の中にある再稼働の対象として、茨城県にある「東海第二原発」が具体的な再稼働の対象として指名されました。このような政府の原発方針を忖度するように、東京電力の旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴された裁判で、東京高等裁判所は「巨大津波の襲来を予測することはできず、事故を回避するために原発の運転を停止するほどの義務があったとはいえない」として、1審に続いて3人全員に無罪を言い渡しました。また、政府は今年中に、漁業者からの合意がないまま汚染水の海中放流を強行しようとしています。

 しかし、2011年3月11日に発令された「原子力緊急事態宣言」はいまだに解除されていません。事故を起こした原子炉サイトからは依然として高レベルの放射性物質が大気や海洋に流出し続けており、事故収束作業も廃炉工程も大幅な見直しが避けられない状況です。

■地震と活火山噴火
 また、この数年、日本各地でマグニチュード4以上の地震が多発しており、高い確率で南海地震・東南海地震の発生や、富士山をはじめとする活火山の噴火予測がされています。もし、東日本大震災クラスの大地震が発生すれば、原発だけでなく、核燃料貯蔵施設や、使用済み核燃料再処理施設等への破滅的な影響が避けられません。

■放射能による小児甲状腺がん、健康被害が多発

 そして、原発の爆発事故によって放出された放射能による汚染の影響で、事故後の10数年間で子どもたちの甲状腺(小児甲状腺がん)がんが300人を超えて発生し、さらに増え続けています。小児甲状腺がんを患った6人の若者たちが提訴した損害賠償請求訴訟は1年を過ぎました。
 小児甲状腺がんの多発以外にも、東北関東地域では放射線障害が原因と思われる様々な健康被害の発生がみられます。小児甲状腺がんに罹患して提訴に及んだ6人の原告(のちに1名加わって7名となる)をはじめとする多くの放射能汚染被害者の救済と、やむなく故郷を後にして避難せざるを得なかった多くの被害者に対する賠償は、当たり前のこととして認められなければなりません。

 政府は汚染水の海洋放出の外に、福島県で発生した放射能汚染土を全国の公共事業で再生利用する道を開くため、環境省の関連施設がある埼玉県所沢市、東京都新宿区、そして茨城県つくば市で「実証事業」と称し、汚染土の埋立事業を行おうとしています。放射性廃棄物処分の目処がまったく立っていないうえに、世界でも類のない地震大国の日本で、原発の再稼働や新増設を行なうなど、無謀以外の何ものでもありません。あらためて言うまでもなく、核と人類は共存できません。

 私たちは、12年前に起きた原発事故由来の放射能汚染によって、小児甲状腺がん等による健康被害だけでなく、福島をはじめ東北関東地域の広範囲で様々な種類のがんや心臓疾患など、多くの健康被害が生じているという現実を明らかにし、 二度と原発事故を起こすことのない、「安心・安全」な社会を構築する必要があります。

 放射能汚染は、環境基本法が定める「公害」です。そのため、国の公害等調整委員会に対して調停・裁定を求めると同時に、今は無理やり「一切ない」ことにされている「被ばく健康被害」の顕在化を目指し、「福島原発事故放射能汚染公害被害原因裁定を求める会」の立ち上げを呼びかけたいと思います。

■原発事故由来放射能汚染公害被害を否定する原発推進派にノーを!

  2011年に発生した福島第一原発事故。それによって環境に漏れ出した多量の放射能により被ばくを強いられた人は、100万人から1000万人の規模で存在すると思われます。そんな人たちの中には、「被ばく」した以降、健康面での異常や不安を訴えている方も多数おられます。

 繰り返しになりますが、原発事故がもたらした被ばくによる健康被害は「一切ない」ことにされています。東電の刑事責任を問う強制起訴裁判でも、また東電に対する多数の損害賠償請求裁判でも、「住民被曝被害」についての責任は問われていません。しかし、福島原発事故後に国が行なっている福島県民健康調査結果では、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもたちの間で発生した甲状腺がんは338人にものぼります。この事実に対して、検討委員会は一貫して「スクリーニング効果」や「過剰診断論」を理由として、「放射線による影響はない」と否定し続けています。

 しかし2022年1月27日、事故発生時に未成年だった福島県在住の男女7人が東京電力を相手取り、「311子ども甲状腺がん裁判」を提訴しました。
 小児甲状腺がんは、通常100万人に年間1~2人といわれる極めて珍しい病気で、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故後、被曝した子どもたちや大人たちの間で急増したことが明らかになっています。福島県でも小児だった若者に限らず、多くの成人の間でも、甲状腺がんをはじめとした病気が高い頻度で発生していることが、全国がん登録等のデータで明らかになっています。

 私たちは、原発事故と罹患の因果関係を明らかにし、放射能汚染によると思われる公害健康被害については、その発生責任と被害に対する救済措置を講じさせるために、公害紛争処理法による公害等調整委員会への原因と責任を求める請求の申し立てを行なうことを計画しています。

■公害等調整委員会への原因裁定を求める申し立てにご支援を!

 公害等調整委員会(以下「公調委」と略)では、申し立てを通じ賠償請求もできます。また、国費による実態調査も行なわれます。「被ばく公害」による健康被害として、白血病や小児甲状腺がんといった「がん」ばかりでなく、放射線で目の水晶体が侵される白内障をはじめ、被ばくの初期症状とされる脱毛や鼻血出血、金属臭味覚、疲労感などは、原発から放出された大量の汚染物質のうち、化学毒性と放射能毒性を併せ持つ「テルル」による典型的な症状であることや、過去の原爆実験や核災害、チェルノブイリや福島での原発事故による初期被ばく症状の典型例であることが、内外の文献等から明らかになっています(山田國廣著『核分裂・毒物テルルの発見 原爆/核実験/原発被害者たちの証言から』藤原書店、2023年2月25日刊)。

  私たちは一昨年から、公害等調整委員会への申し立てを進めるため、福島県内の被害(被ばく)者に申立人になっていただくことのお願いと、代理人の弁護団の結成、そして申し立てを行なうに際しての理論構築などの作業を行なってきており、年内にも公調委への申し立てを行なうことになりました。

 そこで、関係各方面の皆様へのお願いです、ぜひこの申し立てへのご支援とご協力をお願いしたいと思います。今秋までには、キックオフ集会の開催と申し立て(裁判でいう提訴)を行ないたいと考えています。

 今後、この取り組みを進めるに際しては、活動費、とくに弁護士費用等の資金作りが必要となります。いずれは申し立て後にクラウドファンディングを行なうことを考えていますが、差し当たり、弁護団への着手金や準備資金などの捻出のため、ぜひ、暖かいカンパを寄せていただきますよう、よろしくお願いします。➡皆様へのカンパのお願い